インゴ・マウラーさんが好きだった。
ずいぶん昔にお会いしたことがある。本当に、チャーミングな方だった。
照明デザインに革命を起こし、世界に名を馳せた人。けれど、その肩書きだけでは、どうにも収まりきらない。ライトに羽を生やしてみたり、電球の中に電球を入れてみせたり。悪戯好きの詩人。そうとでも呼ぶほうが、しっくりくる。
ふと思いついて、手元にあるマウラーさんのドン・キホーテと、綾巻のスタンドライトを並べて写真を撮ってみた。
ひょろりと首を伸ばして、いまにも飛び出してきそうなドン・キホーテ。細い三本脚でちょこんと立つ、火星人みたいなまあるい綾巻。なにやらひそひそ話でもしているようで、思わず頬がゆるむ。
光で遊び、人を微笑ませる。マウラーさんは、それを本気で仕事にした人だった。こんなデザイナーはもう二度と現れないだろう。それでも、彼が灯した遊び心は、いまも世界のあちこちで灯り続けている。
今日、10月21日はマウラーさんの命日だ。

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